自治体サイトにおけるデザインの姿

おのでら まな

こんにちは!インタビュアーのおのでらです。
スマートバリューでは、全国300以上の自治体様のホームページ制作に携わっています。Webサイト制作においてデザイナーの視点はどんなものなのでしょうか?
今回は、スマートバリューでデザインを担当している2名のデザイナーにインタビューしました。

   人物紹介

   樋口由佳

リスティングや広告の運用、その他様々な職業をご経験したのち、Webデザイナーへ。 2019年にスマートバリューへ入社し、Webデザイナーとして100件以上の案件に携わり、その後2021年に独立。 独立後もスマートバリューでメインのデザイナーとして多くの案件で活躍。

 

   佐藤すみれ

10年ほどWebデザイナーを経験。 2017年にノースディテール(当時の会社名:インディテール)に入社。 地域情報案件に関わって3年、120件以上の案件に携わり、構築から保守まで幅広く活躍。

スマートバリュー以前の経歴

Q.スマートバリューへ入社する前の経歴を教えていただけますか?

樋口:デザイナーになる前はいろんな仕事をしてきたのですが、不動産サイトを運営している会社に勤めていたこともあって、その際はがっつりデザインというよりは、リスティングや広告の運用など幅広く携わっていました。

 

佐藤:地図(ロードマップ)を描く仕事をしていたり、パソコンのインストラクターもやっていました。
元々は絵を描く仕事をしたかったんですが、なかなか厳しい現実もあり、後に興味をもったWebデザインの仕事を現在はしております。

デザイン制作過程について

Q.Web制作の中でデザイナーが担当することはどんなことでしょうか?また、どんなステップを踏んでいくのかも教えてください。

樋口:まずディレクターがお客様へご要望をヒアリングします。どのようなサイトをつくりたいかヒアリングした上で、ディレクターはヒアリング内容を文章にまとめます。デザイナーはこのヒアリング内容を受け取りデザインに着手します。ヒアリング内容からキーワード、例えば爽やか、ポップ、高級感などのイメージを抽出しデザインに落とし込んでいきます。落とし込んだデザインはディレクターへ共有し認識を合わせてからお客様へ初稿を提出しやりとりしながら作っていきます。時間の兼ね合いで複数のご提示ができないので、基本的には1つだけ作成し、お客様とのイメージと離れていれば修正を重ねてご納得頂けるようなデザインに仕上げていきます。

 

Q.自治体サイトとそれ以外でのWeb制作の大きな違いは何か教えてください。

佐藤:自治体サイトとそれ以外ではかなり違いがあると思っていて、普通のサイトはモノを売ったりなにかをアピールをしたりお問い合わせを求めたりなどのコンバージョン(訪問者がホームページの目標としているアクションを起こしてくれた状態のこと)があります。自治体サイトにはそれがなく、自治体サイトの一番の目的は「情報を正しく伝えること」だと思っています。例えば、お住まいの方が住民票を取りにいきたいという目的があった際に、その情報に正しく最短距離でたどり着けるかというのを一番に考えています。そう考えると全ての情報が目立たなければならないのですが、雑多な中にあるのではなく、独立していてきれいにまとめられているようにするのが大きな違いかと思います。

そのためには余白がとても大事で、強弱を出してくれたり、間をつくってくれますし、デザインをする上でとても大事な要素だと思います。

 

Q.デザインに着手する前にしていることはありますか?

樋口:どんな自治体様なのかを事前に調べたりします。海沿いなのか、山沿いなのかベッドタウンなのか、どの地方に近いのかなどを調べます。ここからは人それぞれかもしれないですが、私はふるさと納税サイトを調べることが多いです。名産がなにかとか、どんなことに力をいれているのか、アピールしたいところも掴めるのでよく見ています。
また、自治体ではなく、デザインについてのリサーチはヒアリング内容をきいてからギャラリーサイトや同じような雰囲気のサイトを探してイメージを膨らませるようにしています。
▼ギャラリーサイトの例
(掲載元:https://muuuuu.org/)

 

佐藤:私も事前のリサーチではふるさと納税サイトをよく見ています。その他は観光サイトや移住サイトも見ます。移住者の方のインタビューが参考になって、例えば都会から田舎に流れてきてほしい自治体だと農業に入ってもらいたいとか、都会ではサラリーマンをしていたけれど、移住して農業をしながらのびのび暮らしている記事を見ると夢も膨らみます(笑)
デザインがどうしても思いつかない時もあるのですが、そんな時は少し置いておいてみたり、全く関係のない斜め上の色を入れてみたりとかすると意外としっくり来ることもあります!

 

樋口:思いつかないときに一旦置くのは私もします(笑)

 

Q.デザイナーが関わる制作期間を教えて頂けますか?

樋口:サイト自体ができあがるのに前工程、後工程を含めると3~9カ月ほどの期間があります。その中でデザイナーはデザインに落とし込む作業がだいたい1~1.5日程度です。その後お客様へ見て頂いてトップ画面から制作に1~2週間程度、制作した後には下層ページ分やスマホ版のデザインを作成します。デザイナーが関わる期間は1~1.5カ月くらいです。追加でバナー作成をすることもあります。

 

Q.デザインについてお客様からどんな要望を受けますか?

樋口:例えば、歴史がある町なので和なテイストにしてほしいとのご要望の際は、既にコンセプトが決まっているのでイメージが膨らみやすいです。その他は、〇〇市のようなデザインにしてほしい等、具体的なイメージ例をあげられるお客様もいらっしゃいます。
ご当地キャラクターや名産品、デザインイメージが決まっているお客様はその自治体ならではの個性が出ておもしろいです。

 

デザイナーが手掛けたデザインについて

Q.担当したサイトでお気に入りのデザインとポイントを教えてください。

樋口:私が担当した中でのお気に入りは岩見沢市と藤岡市です。

北海道岩見沢市魅力発信サイト

 

 

樋口:お客様から水色を使ってほしいとご要望がありました。遊園地が有名で夏フェスなども開催されていたり、アクティビティなどもあるので若年層の方にも来ていただくきっかけになり、サイトを通じて魅力を感じてもらいたいなと思っていました。楽し気な印象が伝わってほしかったので、全体的に装飾を多めなデザインにしました。北海道なのでキツネのイラストなどたくさん使いたかったのですが、あまり多様するのは良くないようです。

 

佐藤:私は北海道在住ですが、キツネは身近で、家の周りでも見かけるほどです。畑を荒らしたりフンをしたり住民を困らせることもあるようです。キツネは害獣のような存在でもあるので、デザインに多く取り入れすぎない方が良いようです。

 

 

藤岡市行政サイト

 

 

 

樋口:藤が有名な場所なので藤をフィーチャしてほしいという要望があったので、紫と緑をメインカラーにして優し気で楽し気なデザインにしました。ホームページ右下にあるトップページへのボタンは、埴輪のお顔をひょっこりさせたいとのお客様のご要望でした。お客様のご要望をしっかり取り入れることができた実感がより強かったのでお気に入りです。

佐藤:私が担当した中でのお気に入りは東郷町と鳴沢村です。

愛知県東郷町

 

佐藤:「ちょうど級タウン」というシティプロモーションのコンセプトがあり、そのカラーを全体的に反映させたところがお気に入りです。全体的にそのカラーを散りばめたことで明るい印象になりました。通常だと一番上に自治体名が記載されていることが多いですが、お客様のご要望で本の背表紙のように左に配置しました。
メインビジュアルの下に配置されているバナーは、3Dっぽく作成し、統一感が出るように意識しました。

山梨県鳴沢村

 

 

佐藤:使いやすさを全面に出したデザインで、ご年配の方や誰が見てもわかりやすいように意識しました。太めの線や大き目のフォントを使ってみたり、太めの線でイラストをさりげなくいれてみました。富士山が見える場所なのでいろんなテイストの富士山を散りばめてみたり、名産であるトウモロコシを入れてみたり、そんなあそびも少し加えてみました。
お客様から「エリアをハッキリと分けてほしい」とのご要望があったので、区切り線を///(スラッシュ)や二重線にしたり、吹き出しなどを使ってただの線にすると単調になってしまうところに変化をつけてデザインしてみました。

 

WEBデザイナーとして

Q.デザインする上で大切にしていること・こだわっていることを教えてください。

樋口:市民目線で考えることを一番心掛けています。例えば、住民票を取りたい方が住まいの自治体HPまで調べに来られた際に見やすく使いやすいサイトになるようにデザインを考えています。

 

佐藤:私は細かいところへの気遣いを忘れないようにしています。行の先頭が揃っているか、線の太さが全て同じ太さになっているか、細かいところのバランスはよく見ないとわからないのですが全体で見たときに揃っていないと統一感がなくなってしまう原因になってしまいます。私がデザインするうえではそのあたりを注意して作成しています。

Q.デザイナーをしていて嬉しかったこと・やりがいを感じることを教えてください。

樋口:お客様から気に入ってもらえたり、市民の方から好評ですという言葉をきくと嬉しくなります。

 

佐藤:私も樋口さんと同じです。それに加えてコーディングされたものが実際に仕上がったときとても嬉しくなります。デザインは平面でしかないのですが、それがブラウザ上で動いているのを見たときに大変感動します。

 

Q.最後に、デザイナーを目指している方へメッセージをお願いします。

佐藤:サイトを作成しプログラミングするコーダー(WebデザイナーがデザインしたWebサイトを実際にインターネット上で見ることができるように、プログラミング言語を使用してコーディングする仕事)に対して、デザイナーは花形なイメージがあると思います。”あのサイトのデザインいいね”と直接言ってもらえることはデザイナーとしてとても嬉しいです。でも実際はお客様の要望をしっかりと伺い、時にはお叱りを受けることもあり、地味な作業がほとんどです。しかしデザイナーがデザインして、コーダーがコードを書いて実際に仕上がった時の感動は計り知れません。地味だけれど非常に良い仕事です。

 

樋口:デザイナーになる前となってからのギャップが結構大きくて、デザイナーになる前は、センスがないから無理だと決めつけていたところがあったのですが、紐といていくと全てロジックだと感じます。なんとなくそこに置くのではなく、すべて理由があり理屈で分解できるものだと思います。グラフィックデザインで多少のデザインセンスは必要かもしれませんが、敬遠されている方にはそのように思ってもらえたらいいなと思っています。

 

まとめ

今回は自治体サイトの制作に携わるWebデザイナーへのインタビューでした。
デザイナーの視点を垣間見ることができ、非常に興味深かったです。
万人に見やすいサイトになっているか、必要な情報にいかに分かりやすくたどりつけるのか等、自治体サイトならではのこだわりを知ることができました。
お客様からの要望をデザイナーがどう実現しているか、この過程を紐解くとデザインという仕事の奥深さがよく分かります。
この記事を通して、自治体サイトとその裏で活躍するデザイナーの仕事に注目して頂けると幸いです。

おのでら まな
おのでら まな
デジタルガバメント事業の開発部門所属。
事務兼ライターを担当。
趣味は夏フェスと旅行です。
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